「タッチペンで補修したんですが、色が違って気になっています」という相談が梅雨の時期に多く届きます。先日も一宮市内のお客様から電話がありました。3か月前にドアに小さなキズをつけ、ディーラーで色番号を確認してから市販のタッチペンで補修。そのときは目立たなかったのに、雨の季節になって洗車したら補修箇所だけ白っぽく浮いて見えるようになったというご相談でした。
タッチペン補修を試みること自体は間違いではありません。ただ、「なぜ色が合わないのか」「放置するとどうなるのか」を知らずにいると、再修復のコストが元のキズの2〜3倍に膨らむケースがあります。この記事では、18歳から板金塗装一筋のPoright代表 緒方(板金塗装歴16年)の現場経験をもとに、タッチペン補修が失敗する仕組みと、Porightが実際に対応した再修復事例2件をお伝えします。
なぜ純正色番号のタッチペンでも色がズレるのか
「ディーラーで色番号を調べて同じ番号のタッチペンを買ったのに、なぜ色が違うのか」という疑問はもっともです。その理由は大きく3つあります。
① 車のボディは経年変色している
製造時の純正色コードはあくまでも「出荷時の色」であり、実際のボディは紫外線・熱サイクル・洗車の繰り返しによって少しずつ変色しています。3〜5年経つとボディの色は純正コードから微妙にシフトしているのが普通です。タッチペンの顔料は製造時の色に合わせて配合されているため、経年変色したボディにそのまま塗ると差が出ます。
② 塗料の種類がタッチペンの適用範囲を超えている
ソリッドカラー(白・黒などの単色)であれば目立ちにくいケースもあります。しかしメタリックでは、ラメ粒子をスプレーガンで均一に配向させる技術が必要で、筆塗りでは粒子の向きがバラバラになり角度によって色差がくっきり出ます。3コートパール(ベース・パール・クリアの3層構造)に至っては、タッチペン1本では物理的に同じ仕上がりになりません。
③ 施工環境が仕上がりを変える
気温・湿度・直射日光の有無によって顔料の乾燥速度が変わり、同じタッチペンを使っても仕上がりの色が微妙に変わります。梅雨時期の高湿度で屋外施工した場合、乾燥が不均一になりやすいのはこのためです。
Poright代表 緒方が現場で学んだこと — 「色は買ってくるものではなく、作るもの」
18歳から板金塗装の世界に入ったPoright代表 緒方。現在、板金塗装歴16年。入職1年目に師匠から言われた言葉が「色は買ってくるものではなく、作るもの」だったと振り返ります。
「同じトヨタの同じ色番号でも、製造年式やロットが違えばボディの色は微妙に差があります。さらに経年で変色したボディに合わせるには、色番号を参考に顔料の配合を職人が目で見ながら微調整する『調色』が必要です。Porightでは太陽光に近い蛍光灯・演色性の高いハロゲン・自然光という3つの光源の下で色を確認しながら調整しています。タッチペンにはその工程がありません」(Poright代表 緒方)
タッチペン補修後に特に問題が起きやすいのが梅雨〜夏の時期です。高湿度環境では、薄いタッチペン塗膜と既存塗装の間に水分が入り込みやすくなります。その結果、白濁・膨れ・剥がれが発生します。さらにタッチペンの塗膜にはクリア層が含まれていないことが多く、紫外線にさらされると補修部分だけが黄変するケースも出てきます。「梅雨明けに洗車したら補修箇所が白く浮いて見えるようになった」という相談のほとんどが、このメカニズムで説明できます。
放置するとどうなるか。タッチペン補修のまま半年〜1年が経過すると、補修部の白濁が広がり、周囲のクリア層にまで影響が及ぶことがあります。そうなると、元々1パネルで済んでいた修復が隣接パネルにまで広げる必要が出てきます。早期に対処するほど修復費用を抑えられる——これが板金塗装現場の現実です。
実際の再修復事例 — タッチペン後の修復費用はこう変わる
事例1 — 一宮市・N-BOX(JF4)プレミアムサンセットオレンジII(3コートパール)
駐車場のポールに接触した際のドアの小キズに、市販タッチペンで補修してから4か月後にご相談いただきました。補修箇所の色が明らかにずれているうえ、周囲に白濁が広がっている状態でした。プレミアムサンセットオレンジIIはホンダの3コートパールで、ベースコート・パールコート・クリアコートの3層で構成されます。タッチペン1本での色再現が困難なカラーの代表例です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車種 | ホンダ N-BOX(JF4) |
| カラー | プレミアムサンセットオレンジII(3コートパール) |
| 損傷状況 | ドア小キズ + タッチペン補修後の色ズレ・白濁 |
| 依頼元 | 一宮市 個人オーナー様 |
| 修復工程 | タッチペン層研磨除去 → 下地処理 → ベースカラー → パールコート×2 → クリアコート×2 → ポリッシュ |
| 修復費用 | ¥38,000(税込) |
| 工期 | 2日 |
Poright代表 緒方の見立てでは「タッチペン補修をせず最初から板金修理に来ていただいていたなら、¥22,000程度で済んでいた可能性が高い」とのことです。タッチペン層の除去工程と、広がった白濁の処理が追加費用になりました。
事例2 — 稲沢市・CX-5(KF2P)マシーングレープレミアムメタリック
バンパー付近のキズにタッチペンで補修した後、さらに缶スプレーで上塗りしてしまったケースです。メタリックのラメ粒子が筆塗りと缶スプレーの混在によって完全にバラバラになり、光の角度によって周囲との色差が非常に目立つ状態でした。マシーングレープレミアムメタリックは細かいラメ粒子の配向が特に難しいカラーです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 車種 | マツダ CX-5(KF2P) |
| カラー | マシーングレープレミアムメタリック |
| 損傷状況 | タッチペン + 缶スプレー上塗りによるラメ粒子の乱れ・色差 |
| 依頼元 | 稲沢市 個人オーナー様 |
| 修復工程 | 缶スプレー・タッチペン層を研磨除去 → 調色(ラメ配合微調整) → スプレーガン施工 → クリアコート → ポリッシュ |
| 修復費用 | ¥56,000(税込) |
| 工期 | 3日 |
「DIYで直そうとした気持ちは十分わかります。ただ、メタリックやパールのカラーは塗料の特性上、どうしてもスプレーガンと調色が必要になります。タッチペン後に色がズレていると気づいた段階でご相談いただければ、早いほど修復費用を抑えられます」(板金塗装一筋16年のPoright代表 緒方)
2件とも、タッチペン補修の段階で早期にご相談いただいていれば、修復費用は半額以下になっていた可能性があります。DIY失敗の再修復が高くなる根本的な理由は、タッチペン・缶スプレー層を除去してから本来の修復をやり直す必要があるためです。
まとめ:タッチペンを使う前に知っておくべき3つの判断基準
- ソリッドカラーの小さなキズ — タッチペンで応急処置は有効。ただし経年変色の色差は残る
- メタリック・パールカラー(2〜3コート)のキズ — 色が合わないリスクが高い。最初からプロへ相談を
- すでに色ズレ・白濁が起きている — 放置で悪化する。早めの再修復が修復費用を抑える近道
色番号が同じでも「色が合う」とは限らない——これが板金塗装現場の現実です。タッチペンはあくまで応急処置と理解した上で使うのが正解です。「もう失敗してしまった」という場合でも、早ければ早いほど被害は小さく済みます。
「タッチペンで補修したが色が違う」も無料でご相談ください
写真をLINEで送っていただくだけで概算とアドバイスをお伝えできます。お見積りはすべて無料です。「どこまで悪化しているか」「修復費用はどのくらいか」をPoright代表 緒方が率直にお伝えします。
株式会社Poright(愛知県一宮市平安1-6-2)/ 月〜土 9:00-19:00(日祝定休)
著者: 安藤(Poright 事務スタッフ) / 公開日: 2026年6月14日
監修: 株式会社Poright 代表 緒方 博紀(1992年生・18歳から板金塗装一筋、板金塗装歴16年)